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メリークリスマス
以下、本当はイブに書こうと思ってたけどオチが見つからなかったのでやっつけ仕事したクリスマスSS(雑伊)を置いておきます。
隙間風の吹き込む古い6畳一間の安アパートに帰宅して、伊作はぎょっとした。
半日空けていた家の中は暖房が入って暖かだったし、オレンジ色の照明の下で、薄汚いちゃぶ台の上には似つかわしくないご馳走、ケーキとシャンパンが並んでいて、部屋の奥から、やぁおかえり伊作君と出てきた人が居るものだから伊作は本当に肝が冷えた。
12月24日の夜のことである。
「今年一年伊作君があんまり良い子だったものだから」
奮発してしまったよ。と言って伊作の部屋を勝手に暖めて待ってた誰だか知れない男はシャンパンのコルクが飛ぶおめでたい音を響かせた。
メリークリスマス。
メリークリスマス、ぼんやり復唱しそうになって、いやいやと伊作は首を振った。
「どちらさまでしょう」
男は悪戯っぽく笑って、サンタさん、とか言う。男は別に赤い服も白髭も蓄えてないし、代わりに黒いダブルのスーツで顔は何故か包帯でぐるぐる巻きで、どうみたってメルヘンな要素は無いように見えた。伊作は抑揚なく頷いた。
「はぁ、サンタさんですか」
良い子にしてたねと言ってプレゼントを貰える年はとっくに超えていたが、確かに伊作は良い子というか、良い人ではあったかもしれない。
例えば、車に轢かれた犬猫を拾ってきてみたり、喧嘩してボロボロのチンピラを拾ってきてみたり、路上の仕様も無い様なよっぱらいを拾ってきてみたり、そんなのを一々介抱してやったりしながら日々を過ごしていた。
実は言えば男はそんなしょうもないチンピラとか酔っぱらの中のひとりで、伊作の暮らしの貧しいのに目をつけてしょうもない恩返しにやってきたのだった。
伊作は鍵のかかっていたはずの玄関のドアやら窓やら眺めて納得のいかない顔をしている。その唇が声に出さず、「不法侵入」とつぶやいたらしいのを見てとって男は目を細めた。
「伊作くん、伊作くん」
「はい」
サンタだからしょうがない。
当然の顔をして呼んでいるが男が伊作の名前を知っているのだって不自然なことだった。
けれど男に害はなさそうだし、料理もケーキもそれは美味しそうだったのだ。
「まぁ。しょうがないですね。」
ご親切にどうも。と言って伊作は黒服のサンタクロースと食卓を囲んだ。
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オチません。しばらく卒論にかまけてたのでSSの書き方をすっかりわすれてしまいました。イメージは小公女でした。(えぇー?)
メリークリスマス。
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